2022年12月12日月曜日

【獣医師のお話】世田谷獣医師会より・寄稿シリーズ6 誤飲誤食の事故としつけの大切さ

 ★飼い主の皆様へ気になる話題をわかりやすくシリーズでお届けいたします。

 第6回は 誤飲誤食の事故としつけの大切さです。

                 ご寄稿  獣医師 医学博士 本間義春 先生



 特に、仔犬から成犬に達するまでに多く見られることですが、誤って、飲食してはならない危険なものを、誤飲誤食して、何らかの処置を施さなければならない事が、意外と多く見けられます。

チョコレート、レーズン、ネギ類など、単純な食物であれば、飲食後一定時間内であれば、催吐(吐かせること)処置により、問題を解決できますが、食物以外のものを飲食し、知らずのうちに時間が経過して、激しい嘔吐、下痢、などを起こし、食べたものが閉塞、またはそれによる捻転を起こしていると疑われた場合、内視鏡や外科手術で除去しなければならなくなります。

食物以外でも裁縫の針(光るので興味を持つのでしょう)、ゴムポール、ビー玉、ソックス、変わり者では釣りに使うルアーなども興味を持ち誤食してしまいます。



 いくつか、お笑い話のような経験談をさせていただきます。まだ、内視鏡が普及していない時代のことですが、コッカースパニエルの成犬が、スジャータを容器ごと大量に食してしまいました。一部小腸に達し閉塞したので外科手術で除去しました。本犬?もさぞかし、苦しくて痛い思いをしたことでしょう。傷も無事に治り退院した翌日、その飼い主様から涙声で連絡が入りました。「帰ってきたら焼き鳥を串毎、何本も食べてしまいました」焼き鳥の誘惑に負けて、手術の時の痛みも吹っ飛んでしまったのでしょう。結果、でもどり再手術となってしまいました。


 


バレンタインの日にお母さんが手作りのチョコを家族のために作り、机の上に山盛りにしていたら、ミニチュアダックスが、全部食べてしまいました。クッキング用のチョコは、カカオの濃度も濃く(最近はカカオ濃度の濃いチョコも市販されているので要注意)、黄疸が出て、見事にチョコレート中毒になってしまいました。点滴や強肝剤の投与などで、何とか事なきを得ましたが、1か月後のホワイトデーの日、またもや手作りチョコを食べてしまったと連絡が入りました。この時は、すぐに吐かせたので大事には至りませんでしたが、バレンタインデーとホワイトデーが悲惨な記念日となった嘘のような本当の話です。

 食べてしまった後であれば、対処方法は限られてきますが、まずは、誤飲誤植をしないよう、日ごろから「口の届かない」場所に密封保管することが大切です。猫ちゃんでも、ゴミ箱をひっくり返して、魚を包んでいたサランラップごと食べて、腸閉そくを起こしたこともあります。(多分、かかりつけの先生方も様々な経験をなされていると思います)

 もし、食べようとしている現場を見かけた時、いきなり取り上げようとすれば、飼い主様が大けがをすることは間違いありません。回避する方法の一つは、大好きなオヤツやオモチャなどで気をそらして、その間に取り上げてしまう事です。

 また、「座れ」「No!」、「待て」など行動を中止させるしつけを十分に行っておくことも大切だと思います。しつけに関しては、防災の面でも「ハウス」や無駄吠えをさせないなど、重要なことがいくつもありますね。誤飲誤植は人災です。気を付けていれば防げます。


2022年12月8日木曜日

【獣医師のお話】世田谷獣医師会より・寄稿シリーズ 5 初めてペット(主に犬猫)を飼われる(飼われた)方へ

 ★飼い主の皆様へ気になる話題をわかりやすくシリーズでお届けいたします。

 第5回は初めてペット(主に犬猫)を飼われる(飼われた)方へ です。

                 ご寄稿  獣医師 医学博士 本間義春 先生




コロナ禍で、在宅ワークなどが広まりそれを機会にペットを飼われる人が増えたといわれています。実際に令和2年度より令和3年度の、世田谷区の狂犬病予防注射の実施頭数だけで約2000頭も増えています。

 問題は、飼ったら責任をもって、その子の寿命を全うできるまで、共に暮らしてもらえるかです。すでに、コロナ禍で2年以上が経過し、捨て犬や捨て猫が増え始めているという話を耳にすることもあります。そうならないためには、どうしたらよいのでしょうか?

 


【その1】飼う前に飼おうとする動物のことを良く知っておくこと

  何事も予習が大切ですが、犬、猫の種類によって、体格、かかりやすい病気、性質、習性が異なってきます。以前ご紹介した改正動物愛護管理法によって、ペットショップやブリーダーは、譲渡する前にその動物についての十分な説明をして、健康チェックをしたうえで、販売することが義務付けられていますが、お店任せではなく、自分でも、ネットや本から様々な情報を得ておいた方が良いでしょう。

 飼った後で「こんなはずではなかった」という事がないようにしましょう。

 かかりつけの動物病院も、お近くでいくつか候補を探しておいた方が良いでしょう。


【その2】動物を飼うことはそれなりに費用がかかることになります

  仔犬や仔猫を家庭に迎えてから、看取ってあげるまで、予防や治療、食事、お手入れなど、場合によってはしつけ教室など、毎年それなりの費用が掛かりますし、特にシニア世代になってくると、いろいろな持病を抱え込むことも珍しくはありません。高度な検査や治療になると、人間とそうかわらない器具、器械やクスリなどを使用していますので、驚くような高額治療費がかかることもあり得ます。ペットのことで、家計が破綻しないように、

よく考えてから、飼うようにしましょう。(しつけも重要です)

 将来のことを考えて、少額でも積み立ての貯金をしておくとか、ペットの保険に加入するのも、いざというときの大きな出費を減らす方法です。


【その3】家庭に迎えたら、1週間は健康状態をよく観察しましょう

 家庭に迎えたとき、仔犬、仔猫ちゃんたちは、環境の変化によって大きなストレスを抱え込みます。ストレスが隠れていた病気を誘発することもありますので、食欲、嘔吐。下痢、

咳、皮膚などの様子や、体温のチェックをしておいた方が良いと思います。


【その4】体調が良くても、一週間くらいしたら動物病院で健康チェックを受けましょう

 最近は、ジアルジアという寄生虫の感染症など、販売前の検査をすり抜けてしまう病気もみられますし、ストレスが少なくなったところで、生まれつきの異常がないか、ストレスによって発病した秒は着ないか、動物病院に連れて行って診てもらいましょう。

勿論、いきなり連れて行かず、事前連絡や予約をしてから連れて行くのがマナーです。