2021年3月9日火曜日

【防災のお話し】〈シリーズ②〉2019年台風19号の体験から世田谷区の「ペット同行避難」を考える

 ◇シリーズでお伝えします◇

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はじめに
①台風19号が迫る当時の状況は?(
前回)
 避難所、ペットの受け入れ
②風水害の危険が迫る時 できることは?(今回)
 世田谷獣医師会防災委員蜷川先生インタビュー
③台風19号の被害を踏まえた対応は?
 次回予定

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②風水害の危険が迫る時 できることは?

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多摩川周辺地域を歩いてまわってみました
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上野毛まちづくりセンター管内(上野毛(1~4丁目)、野毛(1~3丁目)、中町(1~5丁目)掲示板には、「ペット防災せたがやネットワーク」のチラシを掲示させていただいていました。掲示期間が終了になったので、多摩川周辺の地区をちらしを回収しながら、災害時の行動を考えてみることにしました。



この日は、多摩川の水位は低く、のどかな風景からはとてもここが浸水するとは感じられません。

 しかし、周辺をまわってみると、想定浸水深さ3M、


 さらに、6M、7M という表示があります。


良く見ると、2階ほどの高さの壁に浸水の跡が残っているところもあり、被害の大きさがわかります。


ちょっとわかりにくい写真になってしまいましたが、お年寄りの方には、きつい坂道もありました。

お年寄りの方、体の不自由な方、小さなお子さん
ペットを連れた家族も、危険が迫ってから避難するのは困難があることでしょう。


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世田谷獣医師会水害アドバイザー 蜷川先生へのインタビュー
『水害は読める』 
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後日、東京都獣医師会 世田谷支部の水害アドバイザーである「クローバー動物病院」(世田谷区玉川117211)蜷川先生に当時の状況と今後の備えについてお話しをうかがいました。


 【当時の状況】

クローバー動物病院では?

台風19号が猛威を振るった1012日。

クローバー動物病院では、結果的には、浸水の被害はありませんでしたが、一時は周辺地域での浸水が広がり病院の浸水も予測された状況でした。

クローバ動物病院では、あらかじめ、リスクが高まった際の行動のひな型を作っていたので、それに沿って、スタッフの安全、動物たちの安全確保のための移動について話し合われたそうです。

 

周辺地域の飼い主さんは?

当日、ペットを飼育されていた方はどうされていたでしょうか?

クローバー動物病院に、当日ペットを預けたいという方はいなかったそうですが、周辺地域で、自宅が浸水の被害にあわれた飼い主さんもかなりいらっしゃったようです。
その後、病院にみえた飼い主さんのお話でわかったことですが、
台風が近づく前に前もってペットだけ他に預けていた方や
自宅が浸水している場合は、自宅にもどれるまでペットの犬猫は、それぞれ
家族、親戚、友人、ペットホテルなどに預けるなど、それが12ヶ月にも及んだケースもあったということです。


私たちができる備え】

蜷川先生が強く言われていたのは、「水害は読める」「地形を読み込む」ということです。

ハザードマップよくよく見ることで、水害の危険が迫ってきた時、

どういう行動をするのか?手順、オプションを考え、実行することができる。のです。


地形を読み込むことで

リーダーは、ハザードマップから地域の避難ルートを誘導することができます。

自力で避難できないお年寄りは、早めに上に避難できるように手助けすることは、実際に

地域で意識して行われているそうです。

 また、クローバー動物病院では、地域での飼い主さんとの勉強会も行われています。

地域で活動する方々が、台風19号の被害を詳細に検証した資料も作られていました。

台風19号の被害を受けて、世田谷区のハザードマップは、最新の浸水予想区域図を反映し、名称も「洪水・内水氾濫ハザードマップ」に変更、より詳細にわかりやすく改訂されました。
各家庭に配布されていますので、必ず、自宅周辺の危険な場所を確認してください。
ハザードマップは、世田谷区のHPでは、こちらから御覧になれます。

 前回の①台風19号が迫る当時の状況は? で、お伝えしたように、

特に風水害では、激しい風雨の中避難してくる状況で室外にペットだけ置くということは考えられません。初めから、避難所へのペットとの同行をあきらめた人が多く、避難所に来てもペットは受け入れられないとと聞き、自宅が浸水しているのにひきかえした人もいました。その後、どうなったのかが気がかりです。

川崎市では、ペットを置いて避難はできないからと、避難せず亡くなられた方がいらしゃいました。ペットを4匹飼っていらっしゃったそうです。心からお悔やみ申し上げます。

「非常時を想定して、飼い主として備えをしておくこと」これはもちろん大切なことです。

しかし、毎年毎年、これまでに想定したことがない・・・という言葉が更新されるような大雨、集中豪雨の発生、大地震もいつ起こるかわかりません。誰でもそのとき、その時間その場面によって避難しなければいけなくなる可能性があります。


ペットの避難場所

台風19号の被害を検証し、

世田谷区では風水害での避難の場合「各避難所でペットを受け入れます」と明確に打ち出されました。これは、「雨風の防げる屋根のある場所」です。

では、実際に避難所のどこをペットの避難スペースとするのでしょう?

前回「①台風19号が迫る当時の状況」で、見てきたように「昇降口」「体育倉庫」「多目的スペース」「体育館の一部」などで受け入れた例もありますが、避難所の施設形態によっても違ってきます。

ペットの安全な管理、アレルギーのある人、ペットが苦手な人との動線の分離等など
避難してからでは、困難なことが多くあります。

ペット防災せたがやネットワークでは、玉川小でのペット滞在スペースの検証と、山野小避難開設訓練に参加させていただき、ペットの同行避難を現場で検証することが、いかに大切かとわかりました。

世田谷区では、基本は、ペット滞在スペースは人と離れたスペースとされているのですが、ペットの管理はどうするのか?ペットの安全管理はどうすればよいのか?
検証することで具体的な課題も見えてきます。

ペットが飼い主と離れることで、不安になり、鳴き声、騒音、ストレスで体調をくずすこともあります。ペットの世話が適切にできなければ、糞尿のにおい、衛生面の問題が生じます。多様なケージが持ち込まれるので、管理をしっかりしなければ暴れて壊れるなどでペットが飛び出してしまう危険(ペットと人の両方に対し)もあります。

ペット防災せたがやネットワークで、現場を検証する中で、

「水害での一時避難は長くても1日。であれば、飼い主が責任をもって自分のペットと共に滞在し、糞尿の処理、ゴミの持ち帰りを徹底する方が、人もペットも落ち着き、鳴き声も減り、他の避難者の安全と安心が得られるのではないか」
と意見を出させていただきました。

また、アレルギーがある方に配慮するために、その方たちの滞在スペースを確保して安全面に気をつけることで安心もされるのではないかとの提案も出てきました。


ペットと飼い主の滞在スペースを同じにすることについて蜷川先生にもお考えをうかがいました。

「ペットの同行避難について、問題となるペットの「騒音、におい、アレルギー」への対応を合理的な方法で進めること

たとえば、
ペットだけでいることでずっと鳴き続けるというカオスが生まれるならば、そうしない方法として、ペットと飼い主のスペースと避難された人のスペースのエリア分けはどうか?
さらに、その距離を離すことはどうか?

避難してきている様々な立場の方が、納得する合理的な方法をみいだすことです。
さらに「あきらめずに合理的な方法で進めていく姿勢を持つこと」が大事だと先生はおっしゃいます。


動物へのアレルギー、鳴き声、匂いへの問題があり、
世田谷区では、現状は、人とペットは別スペースが基本になっていますが、
ペットが好き、嫌いの感情ではなく
各避難所運営を具体的に検討する中で、「合理的方法」みいだしていく道筋を作ることが必要だと強く感じました。

このブログを読んでくださっているみなさま
世田谷区の各地区、各地域のみなさま
ペットを飼っている方も飼っていない方も
ご意見、ご質問、あるいは、実例などぜひお寄せ下さい。

次回は、「③台風19号の被害を踏まえた対応は?」をお送りします。




(文・編集 斉郷 恵)