2021年2月19日金曜日

【防災のお話し】〈シリーズ①〉2019年台風19号の体験から世田谷区の「ペット同行避難」を考える

   ◇シリーズでお伝えします◇

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はじめに
①台風19号が迫る当時の状況は?
 (今回の記事)
 避難所、ペットの受け入れ
②風水害の危険が迫る時 できることは?
 世田谷獣医師会防災委員蜷川先生インタビュー
③台風19号の被害を踏まえた対応は?

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①台風19号が迫る当時の状況

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2019/10/12(土)多摩川氾濫 避難指示が出された
避難所の状況を、時系列で見ていきましょう。
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10/10(金) 
・台風19号の進路は、関東首都圏上陸が予想され、10月10日に災害対策本部を設置
10/11(土)
・区内小中学校休校。幼稚園・小学校休園。8か所の避難所開設を決定。
10/12(日)
・台風19号接近。
・午後2時 多摩川氾濫警戒情報発令避難所を順次開設(22カ所)
・午後2時45分 避難準備・高齢者等避難開始を発令エリアメール、ホームページ、ツイッター、防災行政無線等での情報発信。
HPにアクセス集中し閲覧できない状態となった。
・午後3時30分 多摩川氾濫危険情報発令
警戒レベル4である多摩川の洪水に関する避難勧告発令
・午後4時15分 土砂災害に関する避難勧告25カ所の避難所開設
・午後6時45分 警戒レベル4である「避難指示(緊急)」玉川1丁目と3丁目の堤外地のみ発令。
・午後7時30分 水位の上昇により、多摩川の洪水に関する「避難指示(緊急)」を、対象範囲を広げて発令
・合計で27か所の避難所開設。午後11時 ピーク時には5376名の方が避難

10/14 10時 避難されていた方が順次帰宅されたことを確認し、全ての避難所は閉鎖。


                                                   photo by saigo

 浮かび上がった問題 

■情報発信、情報の混乱
上記、区長あいさつの中でも触れられていますが、世田谷区のホームページにアクセスが集中し、閲覧できない状況が発生しました。(平常時1万未満のアクセス数が27万に急増)

多摩川氾濫危険情報が発令され、多摩川の水位の上昇がテレビなどで繰り返し報じられたこともあり、アクセスが集中したと思われます。(実際に私もこの時なんとか避難所の情報を知りたいと区のHPにアクセスを試みていましたが、つながらず、TwitterやSNSで情報をさがしていました。)

SNS上では、世田谷区はペット同行避難ができると聞いていたのに、連れて行ってみるとだめだと言われ帰ってきたという話や、世田谷区はペット同行避難ができないという情報が広がっていました。

最初に開設された自主避難所に「ペット受け入れ態勢はございません」との説明があり、その後、世田谷区の避難所についてそれ以上の情報が得られないこともあり、それがそのまま一律に「世田谷区はペット同行できない」という情報として伝わっていったように思います。

*自主避難所 
「同行避難の避難所対応については、地震災害発生時は原則ペットとの同行避難者を受け入れるため、その具体的な方法を各避難所運営組織が検討しています。台風第19号が通過した際には、水害時の避難に適した冠水の恐れのない施設である必要性から、地区会館等を自主避難場所として開設しましたが、ロビーなどの規模が小さいため、ケージに入れたペットを屋内に収容するスペースの確保が難しく、ペットの受け入れができませんでした。台風第19号に伴う今回の避難所運営等における問題や課題、水害時の避難所におけるペットの受入可否や、その周知等について、関係所管で検証し同行避難が可能となるよう体制を検討していきます。」(区長へのメール、区の回答より)




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実際、避難所のペット受け入れは
どうだったでしょうか?
当日の画像、Twitter発信を見ていきましょう
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【指定避難所 A 】 1610 
「現在避難者200人ほどです。ペットはダメと言われました。運営を仕切る区の指揮担当者がいないので混乱しています。」

【避難所 B】 1659

「体育館の倉庫が同伴避難場所。まだ外にも犬猫連れてきた方々並んでいます。倉庫は満員ですが物をどかしてこれからスペースひろげます。」




「町会の方と相談し、ここが犬猫同伴避難エリアとしていただきました。

外の広場も屋根あります。すぐに避難してください。」


「ペット同伴避難エリアは2階への階段のぼる手前。張り紙とかないので。世田谷区としては認められないそうです。しかし町会おっけーなら良しとなりました!今、わんこ避難きました。」


【避難所 C 】 

ペット同伴。体育館入って右側手前のブロック許可いただきました。

今現在数匹のウサギやわんちゃん避難しています。


【避難所 D】

毛布を運び入れている入り口の様子です。毛布は風雨強くなったときに運び入れられています。このシステムはどうなっているかはわかりませんでした。





入り口の様子は、ペット可否も聞けない状況を現していると思います。
受付では例えば「私の住んでいるマンションは避難したほうがいいか?」という類の質問が多く感じました。
「避難所に避難してきたほうがいいか?」を聞きに来る人が本当に多かったのです。

私たちは平常時に自分の住んでいる地域の情報を把握しておきましょうと
よく聞いてきたと思いますが、
現実には、やはり避難情報が流れてくるまではわからない人がとても多いのです。

当日にペットはどうかは聞くことはハードルが高く、やはりペットの避難は早く今のうちに
進めていかなければと痛感しました。


以上は、2019年10月12日当日、菊池ひとみ(ペット防災せたがやネットワーク理事)が、
避難所をまわった際の画像、言葉より構成、編集いたしました。

*掲載している写真は、避難所の一部であることはご了承ください。
*画像、文章の無断転載はご遠慮ください。



『大切な地域のつながり』

・ ある避難所では、すでにペットと一緒にいられるスペースがありました。

・ある避難所では、入口でペットは入れませんというアナウンス

・ある避難所は当日現場で決定し、臨時でペット避難スペースを開設et

地域防災に取り組む町会の方々、運営に関わっている様々なポジションで活動する方々の表情や落ち着いた対応等を目の当たりにし、避難所運営をまとめている様子や思いに実際に触れ、改めて感じ入りました。 

避難所運営はエリアごと違うのですから、納得がいきます。そして、ペット防災について乗り越えるべき多くの課題もよく理解できました。

〈ペット防災せたがやネットワークブログ「ペットと私と防災」菊池ひとみより抜粋〉

 



避難所で浮かび上がった問題

■ペット受け入れの体制

当日の状況から避難所のペット受け入れの体制について以下の問題があげられます。

・開設数を順次増やしていったが避難所がいっぱいになり入りきれず、他の避難所に回らざるを得なかった方もいた。

・実際の現場では、ペットと人を分けるということはできなかった

・自宅が浸水しているのに、ペットと入れないので、ひきかえすという人もいた

・ペット受け入れを断られたが、現場で粘りよく交渉し、限定したエリアで受け入れた事例もある。

上記のことから

「各避難所ごとに、風水害の際と地震の際を想定して具体的なペット受け入れの体制を考えておくこと」

避難所ごとのペット同行マニュアルの作成が重要だと考えます。


次回は、

②風水害の危険が迫る時 できることは?
 
世田谷獣医師会防災委員 水害アドバイザーの蜷川先生にインタビューした内容をお送りします。

                        
(文・編集 斉郷 恵)




 







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