2022年8月11日木曜日

【獣医師のお話】世田谷獣医師会より・ 緊急寄稿 犬の熱中症について

 ★飼い主の皆様へ

 猛暑が続いています。犬の飼い主の皆様へ「熱中症」について世田谷獣医師会より緊急寄稿いただきました。ぜひご覧ください。
 ペットとともに酷暑を無事に乗り切れるよう、どうか十分にお気を付けください。


                 ご寄稿  獣医師 医学博士 本間義春 先生

          

 

今年は、7月には最高気温が35℃を超える猛暑日が続くような、異常に暑い夏です。

人では、新型コロナと熱中症患者が搬送されてくるため、大変な状況に陥っているようです。まだまだ、酷暑は続きますし、残暑も長く続くかもしれません。

 

P防様に参加されている飼い主様であれば、熱中症のことは、常識的な話かもしれませんが、いくつか、大切な要点を押さえておきたいと思います。

猫に関しては、熱中症の症例は犬と比較すると極めて少ないため、割愛させていただきます。

 



1        犬は人間より体高が低いため、お散歩で、道路の熱反射の影響を受けやすいので、

昼間のお散歩は日陰を通るにしても避けるべきです

お散歩前に、ご自分の手で道路の温度を確かめることをお勧めいたします。

高齢犬や心臓病などリスクを抱えている場合は特に用心してください。

人とは異なり暑いとかダルイとか言えませんので、お散歩中も、呼吸が荒くなっていないか、ふらついていないか、など様子を十分注意して観察してください。

散歩中は一休みしつつ、犬用のポカリで水分補給することも良いでしょう。


2        犬には汗腺がほとんどないため、体温調節を呼吸にゆだねていて、高温や多湿の場合、熱の逃げ場がなくなり体温が上昇しやすくなります。これは、屋内、屋外ともにいえることです。人よりも熱中症にかかりやすいと言われる所以です。

夜に気温が下がってきても、湿度が高い時は要注意です。

日中は勿論のこと、夜間もドッグランなどで激しい運動をしたり興奮することは避けましょう。


3        室内犬でも、クーラーのスイッチを入れ忘れたり、温度調節の間違いは事故につながります。帰宅為された時、愛犬がアワを吹いて痙攣をおこしている、なんてことのないよう、ご注意ください。


4        トリミングに出す時も、多頭数をケージに入れて集めて回っていないか注意してみてください。仮に車中で空調を利かせていても、多数のケージに入れられてしまっては、ケージ内で熱がこもってしまい、到着直後のお散歩時に熱中症になったり、トリミングから帰ってきたときに体調を崩してしまうケースも見受けられます。

ご自分でお店まで、できれば車でお連れ頂くことが、一番安全です


5        旅行に連れて行くときなども、ケージに入れる場合、通気性の優れたものを選ぶべきしょう。また、人間のお子様同様、車中に長時間置き去りにすることも避けましょう。


 



 

では、もし、愛犬が熱中症になってしまった場合、どうしたら良いでしょうか?


1      まず、首、脇、内股など太い血管が存在する場所を、タオルをまいたアイスノンで冷やしましょう。ただし、体が冷えてきたから大丈夫と自己判断することは、大変に危険です。


2        熱中症になったとき、全身の体温がひどい場合44℃くらいまで上昇しています。

40℃を超えると、体のタンパク質が破壊されてしまいます。脳、神経細胞、その他の内臓など、ありとあらゆる臓器がダメージを受けていて、適切な処置を施さないと、仮に体温が下がったとしても、多臓器不全を起こし死に至りますので、1で書いたように、体温を下げつつ、動物病院に必ず連れて行ってください。


3        旅行先など必ずしもかかりつけの病院に連れていけないケースもありますので、特に、心臓、その他持病を持っている場合、どのようなクスリを常用しているのか、どんな持病を持っているのか、処置をするドクターに説明できるようにしておいた方が良いと思います。


4        一番大切なことは、目の前で愛犬がアワを吹いて痙攣をおこしていても、慌てずに冷静に対処することです。そのためには、すべての危機管理に関して言えることですが常日頃から上記対処法をイメージトレーニングしていただくことが大切だと思います。

 

行動制限がなく、新型コロナも爆発的感染拡大を見せていますが、熱中症にも気を付けつつ、ペットとともに酷暑を無事に乗り切れるよう、どうか十分にお気を付けください。




2022年8月4日木曜日

【獣医師のお話】世田谷獣医師会より・寄稿シリーズ 3 マイクロチップ(MC)について

 ★飼い主の皆様へ気になる話題をわかりやすくシリーズでお届けいたします。

 第3回は 「マイクロチップ(MC)」についてです。

                 ご寄稿  獣医師 医学博士 本間義春 先生



6月から改正動物愛護管理法が施行されました生後30日齢の犬や猫へのマイクロチップ(以下MC)の装着が義務化となりました。MCを装着した獣医師は証明書を発行しなければいけません。現在飼われている方は、努力義務です。




MCを装着することには大きな意味がいくつかあります。

 

【その1 】 飼い主およびその責任をはっきりさせること

 MCの情報には、国籍から飼い主の氏名、犬猫の種類年齢、性別、装着した獣医師の氏
名などが含まれています。新型コロナの影響でペットを飼う人が増えましたが、捨て犬。捨て猫を増やさないため、飼い主の所在と飼育責任をはっきりとさせる意味があります。


【その2】 迷子になったとき(特に災害時など)

 災害時に離れ離れになったとき、MCが装着されていれば、誰の犬や猫だか、すぐに判明します。
 *注 災害時には犬猫の迷子が多く発生します。鑑札や迷子札などを身につけていなかっ たり、つけていても混乱の中でなくしてしまうことも多々あります。


【その3 】出入国の際に必要

 先日ウクライナ難民の連れてきたペットの受け入れに関して、ネットで炎上がおきたようです。その後の農水省の説明を見るところ、対応に問題はなさそうです。ただし、猫は逃げやすいので心配です。(*犬に用いている狂犬病ワクチンは猫でも使用可能です)

海外赴任の際、あるいは、他国の人が日本在住時に飼われた犬や猫に関しては、MC装着後1か月間隔をあけて狂犬病予防注射2回接種更にその一か月後に、抗体価を測定して規定値を上回っていれば、出国が許可(出国の際数か月は時間に余裕を持ってください)されます。抗体価の有効期限は2年間です。

渡航先でも定期的ワクチン接種を行ってください。


【その4】今後MCを装着して譲渡された犬は、保健所での登録の必要がなくなる

 MCの登録は、基本、環境省に登録する方法(法的に絶対に必要です)と、
AIPOなどの団体に登録する方法があります。
 
環境省の登録データは保健所と共有されるため、従来行われていた、登録して鑑札をもらう事の必要はなくなります。しかし、AIPOなどの団体に同時に登録することも強くお勧めいたします。 *環境省、AIPOへの登録には、各々費用が1050円、300円かかります。

 迷子になってしまった際、飼い主様から環境省や保健所にMCのナンバーを問い合わせても情報を開示してもらえません。AIPOなどであれば、情報を教えてもらい、確認を取ることができますので、双方に登録するのがベストだと思います。





 ただしMCの情報がちゃんと飼い主様の名前に変更されていなければなりません。
購入譲渡時にはペットショップやブリーダーなどの名前で登録されていると思われますので、変更手続きをしなければなりません。現在登録済(一生に一度です)のワンちゃんは、そのままでも大丈夫ですが、なるべく装着してください。




 まだ、施行後間もないため、現場でも混乱を生じています。現時点で知りうる限りの情報は書きましたが、なるべく、かかりつけの病院にお問い合わせいただき、確認してください。