2022年6月8日水曜日

【獣医師のお話】世田谷獣医師会より・寄稿シリーズ 1 「 マダニのちょっと気になるお話し」

  ★飼い主の皆様へ気になる話題をわかりやすくシリーズでお届けいたします。

 第1回は「マダニのちょと気になるお話し」です。

                 ご寄稿  獣医師 医学博士 本間義春 先生

 

ペット防災せたがやネットワークの皆様には、東京都獣医師会世田谷支部長任期中に、多摩川決壊を機に、防災に関していろいろと、つながりができ、HPでもたびたび名前をご紹介していただいていましたので、はじめまして、ではないかもしれませんね。しばらくの間、なるべく解りやすいような文書をアップしていきたいと思いますので、宜しくお願いいたします。



今年は、寒暖の差はあれ、少し季節の進み方が早いようです。この文書を書いている5月中旬でも、外は30℃に迫る暑さです。

狂犬病予防注射月間は46月ですが、すでに、フィラリアやノミ、マダニの予防も開始されている飼い主様も多いと思います。

マダニは、芝生や草木に潜んでいて、1匹が約千個の卵を産みます。子供のダニ(幼ダニ)から大人(成ダニ)になるまで、吸血しつつ3回程度脱皮を繰り返します。

ペットでマダニが寄生しやすい場所は、主に草むらに顔を突っ込むので、顔の毛の少ない皮膚の露出された、耳の淵、目の周り、口唇部、などです。


成ダニが血を吸うと豆のように黒いイボのように見えますが、もし、ウイルスを含んでいた場合つぶすのは非常に危険なので、見つけても取ろうとせずにかかりつけ医に連れて行ってください。

足やおなかの皮膚にもつきやすく、特に幼ダニが寄生した場合、成ダニとは異なり、体高の低い犬は、おなか一面に湿疹ができたように見えます。赤い湿疹の真ん中に黒い点のようなものが見えます。


SFTS(重症熱誠血小板減少症候群)という病気ですが、ウイルスによる感染症です。数年前に中国から侵入し、ウイルスを保有しているマダニに咬まれることで、野生動物、ペット、人が感染し、発病した場合、人では約230%の死亡率があると今までの研究ではわかっています。




感染した動物では、発熱、食欲不振、嘔吐、黄疸、頭痛(ヒト)などの症状が認められ、血液検査を行うと、血小板や白血球の著しい減少と、血清ビリルビン値の上昇が認められます。犬は比較的無症状の場合も多いのですが、猫の場合感染した半分が1週間以内に激烈な症状でなくなってしまうようです。外におでかけする猫ちゃんは要注意です。

数年前に中国から侵入し、主に九州中国地方などで流行し始めましたが、シカやイノシシなどの野生動物がウイルスを保有したマダニの運び屋となり、徐々に北上し、昨年には、人では初めて、箱根の山を越えた千葉県で死亡者が発生いたしました。

 関東地方以北の獣医師は、ほとんど、診察経験がありません。感染した獣医師の話を聞くと、感染猫の採血の時に飛び散ったウイルスを大量に含んだ血が目の結膜について、そこから感染してしまい、数日でICUに入院し生死の境目を漂ってしまったそうです。世田谷区は緑の多い公園や、多摩川の河川敷など、都会の中では野生動物が生息しやすい環境が多いので、獣医師会の先生方の間でも、今後、九州のような状況になることを危惧しています。

 新型コロナの様々な行動制限も緩和されてきた今、皆様も公園の散歩や、野外にお出かけの際は、皮膚の露出部分をできるだけ少なくマダニがつかないように、ペットには必ずノミダニ予防を行ってください。

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