2022年11月23日水曜日

【獣医師のお話】世田谷獣医師会より・寄稿シリーズ4 学校飼育動物について(獣医師会の取り組んでいる事業)

 ★飼い主の皆様へ気になる話題をわかりやすくシリーズでお届けいたします。

 第4回は学校飼育動物についてです。

                 ご寄稿  獣医師 医学博士 本間義春 先生


 


 今回は、病気や健康のことではなく、獣医師会が取り組んでいる事業についてご紹介させていただきます。ペット防災せたがやネットワークの皆様もご存じのように、獣医師会に所属されている先生方は、日々の診療の他に、人獣共通感染症の情報共有と飼い主様への注意喚起狂犬病予防事業不妊事業、防災面でのアドバイザー的役割、子供たちに命の大切さを教えるための学校飼育動物指導など、先生によって多少の温度差はあるものの、役割分担をしてご尽力いただいています。

これらは、ペットや飼い主様のためだけではなく、区民、都民のため、また、将来を見据えた大切な活動です。

小学校の教員の皆様は、マスコミでもたびたび取り上げられるよう、オーバーワークで大変です。飼育動物の様子を見たり、生徒さんたちに指導する余裕はほとんどなく、「なんとなく情操教育のため学校で飼育している」というのが現状の様です。

 東京都獣医師会と東京都教育委員会の間で、2年間ワンセットで、都内の5校の小学校に手を挙げてもらい、「小学校動物飼育推進校事業」を実施しています。

世田谷支部では、

過去に、平成2627年度に区立山野小、平成2829年度に区立松原小、そして、令和23年度に区立太子堂小学校で、事業を実施してきました。令和45年度も区立松沢小で実施する予定です。



学校飼育動物に対する知識、生徒さんへの獣医療の現場ならではのお話をすることで、動物に親しむこと優しく接すること動物を思いやる心を育てる事、高学年でのキャリア教育が大きな目的となっています。 

 具体的内容としは、事前に小学校と打ち合わせを行い、12年生のふれあい教室、6年制には獣医の仕事というキャリア教育、飼育委員会指導などを行います。内容は学校ごとに異なりますが、基本は同じです。

 例年、授業もふれあい教室も、対面式の授業を実施していましたが、特に、令和23年度に実施した太子堂小の場合、新型コロナ禍での授業なので、かなり苦労いたしました。

ふれあい教室と飼育委員会指導は、対面式で行い、その他の授業はZOOMを用いて非対面式で行いました。

 低学年のふれあい教室では、事前にウサギの抱き方や心臓の話など簡単にZOOMで授業を行った後、ふれあい教室で実際に犬やうさぎとふれあい、心音を聴いたり、実際に手術で用いる器具などを見たり触れたりして、命の大切さを少しでも肌で感じてもらおうという試みです。コロナ前でのふれあい教室では、一人ひとり聴診器でウサギの心音を聴いてもらいましたが、コロナ禍では、拡声器を用いて、皆で一度に聞くようにしました。実際に、ウサギや犬の心音を聴いた時に、目を丸くする生徒さんたが、今でも忘れられません。





 飼育委員会の指導は、実際にうさぎ小屋の環境を視察、指導し、ウサギの飼育についての知識を伝えます。飼育委員会の生徒さんから低学年の子供たちに、会得した知識を教えてあげることも大切です。太子堂小では、ものすごく臆病であった2羽のウサギが、飼育委員会指導により、翌年には、ふれあい教室でおとなしく生徒さんたちに抱かれるまで性格が変わったことで、副校長先生をはじめ。皆驚かれていました。




 過去の、小学校でのキャリア教育の授業でも、諸先生方の個性に合わせた授業が行われて、確実に、教育的効果が得られているようです。

 

 これら授業を受けることで、将来獣医さんになってみたいという生徒さんの意見も多々聞かれました。また、実際に、ゆとり教育の時代に私自身で山野小から依頼され独自に授業を行ったときの生徒さんが、なんと、今は、自分の病院の動物看護士として仕事をしています。公立の小中学校では、手術などの重症例を除き、基本的には学校動物の診療、治療、指導を世田谷支部では無料で実施しています。獣医師会のほとんどの先生方も、日々の診療の中でも、子供たちに、いかに、思いやりをもって動物に接するか、心を砕いて接していると思います。

また、公立の学校は災害の際の避難場所に指定されますので、一見関係のないように見えますが、小学校との関係を良好に保つことが、防災活動にも活かされてくると思われます。

 これを機に、ワンちゃん猫ちゃんは、今何を考えているのだろう、どのように感じているのだろうという、相手を思う気持ちについて、御家庭内でお話しすることができると、優しい気持ちを育てることになるのではないでしょうか?

 動物を飼っていないご家庭でも、授業の後で話し合いをしているようで、何年か後に、

保護犬を受け入れたご家族もあり、そういう話を耳にすると、この事業を継続していくことの大切さを感じさせられます。

 令和45年度は、松沢小ですが、1学年5クラスのマンモス校で山野小と同程度です。

すでに、1年生の授業(9/8)、ふれあい教室および飼育委員会指導(9/13)を対面式で実施いたしました。授業の様子の一部は、松沢小HPの学校日記に掲載されていますので、ご参照ください。

 

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